「行き ず らい」と「行き づ らい」。
見た目はほとんど同じなのに、どちらが正しいのか迷ったことはありませんか。
実はこの2つ、単なる表記の違いではなく、日本語の音・意味・文化の変化を映し出す、非常に興味深い言葉なんです。
文法的に正しいのは「行きづらい」。
けれども、SNSや会話では「行きずらい」も広く使われています。
では、なぜ“誤用”のはずの「ずらい」が、これほどまでに浸透したのでしょうか。
この記事では、「づらい」と「ずらい」の正しい使い方から、発音・語源・言葉の進化までを徹底的に解説します。
さらに、「生きづらい」「話しづらい」など、似た言葉にも応用できる覚え方を紹介。
日本語を正しく使うだけでなく、“伝わる日本語”を選ぶ力を身につけたい人にぴったりの内容です。
「行き ず らい」と「行き づ らい」どちらが正しい?
多くの人が一度は迷うこの疑問、「行き ず らい」と「行き づ らい」。
実際、SNSやブログでも両方の表記を見かけるため、「どっちでもいいのでは?」と思う人も多いでしょう。
しかし、日本語の成り立ちと文法的ルールを見ていくと、明確に正しい形が存在します。
二つの表現の意味と語源の違い
「行きづらい」という言葉は、「行く(動詞)」+「つらい(形容詞)」の組み合わせから生まれました。
ここで「つらい」は「苦しい」「困難である」という意味の形容詞で、「行くのがつらい」という感覚をそのまま表現しています。
つまり、「づらい」とは「つらい」が音変化してできた語尾なのです。
一方、「ずらい」には語源的な根拠がなく、正しい日本語としては存在しません。
文法的にも、語源的にも正しいのは「づらい」。 「ずらい」はあくまで発音の影響から生まれた“口語的な表記”にすぎません。
| 表現 | 構成 | 意味 |
|---|---|---|
| 行きづらい | 行く+つらい | 行くのが困難・気が進まない |
| 行きずらい | (誤用) | 発音に基づいた表記。正しくは「づらい」 |
「づらい」はどんなときに使う?
「づらい」は、動作に対して“心理的・物理的にやりにくい”というニュアンスを表します。
つまり、「体の動き」や「心の抵抗」があるときに使うのが基本です。
たとえば「言いづらい(本音を言うのが気まずい)」「食べづらい(箸でつかみにくい)」のように、人の感覚や気持ちを含んだ“困難さ”を表します。
反対に、単に「物理的にできない」場合は「できない」や「難しい」を使う方が自然です。
| 表現 | 意味の違い | 使い方の目安 |
|---|---|---|
| やりづらい | 精神的・感覚的にしにくい | 人前で話すのがやりづらい |
| やりにくい | 単に操作・行動が難しい | パソコン操作がやりにくい |
なぜ「ずらい」と書く人が増えているのか
実は、日本語の発音の中では「づ」と「ず」はほぼ同じ音(有声音)です。
このため、話し言葉の世界では違いがほとんど聞き分けられず、「ずらい」と書いても違和感がない人が増えています。
また、スマートフォンの変換機能やSNSの影響で、誤表記のまま拡散されやすくなっているのも大きな要因です。
発音では区別がつかなくても、書き言葉では「づらい」が正解。 学校教育や公的文書ではすべて「づらい」が採用されています。
| 原因 | 影響 | 結果 |
|---|---|---|
| 音声上の区別がない | 「ず」と「づ」が同音に聞こえる | 誤表記が増加 |
| SNS・予測変換の影響 | 自動修正されず誤用が定着 | 「ずらい」派が増加 |
| 言葉の柔らかさ | 「ずらい」の方が軽く感じる | 会話表現では許容されつつある |
文法的な根拠:連用形+「づらい」のルール
文法的に見ると、「づらい」は動詞の連用形に接続する補助形容詞です。
「行く(連用形:行き)」+「づらい」で「行きづらい」となるように、ほとんどの動詞に自然につながります。
この形は、「にくい」や「やすい」と同じ活用パターンを持つのが特徴です。
つまり、「行きにくい=行きづらい」と言い換えられる場合、必ず「づらい」を使うのが文法的にも正しい。
| 接続の仕組み | 例 |
|---|---|
| 動詞連用形+づらい | 言いづらい・書きづらい・歩きづらい |
| 動詞連用形+にくい | 言いにくい・書きにくい・歩きにくい |
結論:「行きづらい」が唯一の正解
ここまでの内容を整理すると、「行きづらい」だけが文法的にも歴史的にも正しい表記です。
「行きずらい」は発音から生まれた略記であり、正式な日本語としては誤りとされます。
ただし、話し言葉の世界では「ず」と「づ」の区別が失われつつあるため、完全な誤りとまでは言えません。
しかし、文章として他人に伝える場では、正しい形である「づらい」を選ぶのが大人のマナーです。
ビジネス・教育・出版など、正式な文脈では常に「づらい」を使いましょう。
「ずらい」は誤用?それとも許容?
「行きずらい」という表記をSNSやブログで見かけることが増えました。
かつては「誤用」とされてきたこの表現ですが、最近では「もうこれもアリなのでは?」という声も聞かれます。
ここでは、「ずらい」が本当に誤りなのか、それとも時代とともに受け入れられつつあるのかを、言語学の観点から整理していきます。
「誤用」とされてきた背景
もともと日本語の教育現場では、「づ」と「ず」は明確に区別して教えられてきました。
「づらい」は「つらい(辛い)」が音変化した形であり、語源的な正しさがあります。
一方、「ずらい」には語源がなく、単なる発音上の表記ミスとして扱われてきました。
たとえば文部科学省が定める『現代仮名遣い』でも、正しい表記は一貫して「づらい」とされています。
つまり、教育・公的基準においては「ずらい」は明確に“誤用”です。
| 時期 | 基準となる文献 | 扱い |
|---|---|---|
| 昭和21年〜現在 | 文部科学省『現代仮名遣い』 | 「づらい」が正しい |
| 国語辞典(例:広辞苑) | 「ずらい」は記載なし、または「誤り」と明記 | 非推奨 |
現代日本語での使用実態
しかし、現実の日本語使用に目を向けると、「ずらい」は確実に広がっています。
特にSNS、ブログ、YouTube字幕などのカジュアルな場面では、「行きずらい」「言いずらい」が一般的に使われています。
国立国語研究所の「日本語ウェブコーパス」でも、「行きずらい」という表記の出現頻度は、2010年代後半以降に急増しています。
つまり、正式には誤用であっても、日常的には「自然に見える表現」として定着しつつあるのです。
“間違い”ではなく“俗用”として広がっている——これが現代の実情です。
| 年代 | 「行きずらい」出現傾向 | 特徴 |
|---|---|---|
| 2000年代以前 | ほぼ存在しない | 教育基準の影響が強い |
| 2010年代 | SNSで急増 | スマホ入力・発音の同音化 |
| 2020年代 | 一般化傾向 | 文脈で許容される場合あり |
なぜ「ずらい」が広がったのか
「ずらい」が広まった背景には、音声とテクノロジーの両面が関係しています。
まず、音声面では「ず」と「づ」の区別がほぼ失われているため、耳で聞いて違いを感じにくくなっています。
次に、スマートフォンやSNSの普及により、「ずらい」と打っても自動で「づらい」に変換されない環境が増えました。
この結果、誤用のまま文章が拡散され、多くの人に「見慣れた形」として認識されるようになったのです。
“音が同じ”という事実が、“表記も同じでいい”という心理を生み出しているのです。
| 要因 | 具体的内容 | 影響 |
|---|---|---|
| 音韻変化 | 「ず」「づ」の発音が同一化 | 誤表記への抵抗が減る |
| 入力環境 | スマホで自動修正されにくい | 「ずらい」表記が増加 |
| SNS文化 | カジュアル・自然な言い回しが重視される | 「ずらい」も“可愛い表記”として受け入れられる |
辞書・文献での扱われ方
国語辞典では、ほとんどが「ずらい」を正式な語として扱っていません。
ただし、近年では一部の辞典やWeb媒体が「俗用」として注釈を加えるケースも増えています。
たとえば『デジタル大辞泉(小学館)』では、「づらい」が正しいが、口語では「ずらい」と書かれることがあると補足しています。
これは、言葉が“正誤”だけでなく“使われ方”でも評価される時代に変わってきたことを示しています。
「ずらい」はまだ“誤り”だが、将来“許容表記”になる可能性がある。
| 辞書 | 掲載内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 広辞苑 第七版 | 「づらい」のみ記載。「ずらい」はなし | 伝統的基準を維持 |
| 新明解国語辞典 第八版 | 「ずらい」は記載なし | 誤用扱い |
| デジタル大辞泉 | 「づらい」項に「口語ではずらいとも」 | 俗用として補足 |
社会的・文脈的な許容範囲
言葉の使い方は、時代や文脈によって変わります。
「ずらい」はまだ正式な言葉ではありませんが、会話・SNS・創作文章などでは自然な表現として通じる場合があります。
一方で、ビジネスメールや論文などのフォーマルな文脈では、「づらい」を使うのが基本です。
つまり、「ずらい」は“間違い”というより“カジュアル表現”と理解するのが現代的です。
| 使用シーン | 推奨表記 | 理由 |
|---|---|---|
| ビジネス・学術 | づらい | 文法・規範上の正しさ |
| SNS・会話 | ずらい | 柔らかく自然な印象を与える |
| 教育・出版 | づらい | 読者に誤解を与えないため |
まとめ:「誤用」から「時代の揺らぎ」へ
「ずらい」は、かつては単なる誤表記とされてきましたが、現代では使用頻度の高さから“言葉の揺らぎ”として扱われつつあります。
今後、社会全体でこの表記が広く受け入れられれば、辞書や教育基準も変化する可能性があります。
言葉は常に時代とともに変わるもの。重要なのは、場面に応じて最適な表現を選ぶ意識です。
今の時点では「づらい」が正しい。しかし、「ずらい」を使う人を責める必要はない。 これが現代日本語の柔軟なあり方です。
「行き ず らい」と「行き づ らい」の覚え方
「正しいのは“づらい”だと分かっても、つい“ずらい”と書いてしまう」という人は多いですよね。
この章では、単なる暗記ではなく、意味・語感・記憶の仕組みを使った効果的な覚え方を紹介します。
一度身につければ、ほかの「言いづらい」「生きづらい」などにも自然に応用できます。
① 「つらい(辛い)」とペアで覚える
最もシンプルで確実な覚え方は、「つらい」とセットで覚えることです。
「行くのがつらい」→「行きづらい」と変換できれば、もう迷いません。
語源的にも「づらい」は「つらい」から派生しているため、意味的なつながりを意識することが大切です。
“つらい=づらい”のリズムを覚えれば、すべての動詞に応用可能です。
| 動詞 | 語源の考え方 | 正しい表記 |
|---|---|---|
| 行く | 行くのがつらい | 行きづらい |
| 話す | 話すのがつらい | 話しづらい |
| 食べる | 食べるのがつらい | 食べづらい |
| 生きる | 生きるのがつらい | 生きづらい |
② 「にくい」「やすい」と同じ形と考える
文法的に「づらい」は、動詞の連用形に接続する補助形容詞です。
この構造は「にくい」「やすい」とまったく同じです。
つまり、「行きにくい」「行きやすい」と同じ感覚で「行きづらい」と覚えれば、自然に使えるようになります。
“動詞+にくい/やすい/づらい”の3兄弟ルールとして覚えるのがポイントです。
| 接続のパターン | 例文 | 意味 |
|---|---|---|
| 動詞+にくい | 話しにくい | 行動が難しい |
| 動詞+やすい | 話しやすい | 行動が容易である |
| 動詞+づらい | 話しづらい | 心理的・感覚的に困難 |
③ 視覚で覚える:「づ」は「つ」に点がついている
意外に効果的なのが「形で覚える」方法です。
「づ」は「つ」に濁点(点)がついた形になっています。
つまり、「つらい(辛い)」に濁点をつけたのが「づらい」と考えると、視覚的に記憶に残りやすくなります。
“つ”に点をつけた「づ」=「つらい」と同じ仲間、と覚えるのがコツです。
| 文字 | 構造 | 関連づけ |
|---|---|---|
| つ → づ | 濁点をつけるだけ | 「つらい」の仲間 |
| す → ず | 別の音(独立した語) | 「ずるい」など別系統 |
④ 認知心理を活かす:「意味連想法」で定着
人間の記憶は、音や文字よりも「意味のつながり」で定着しやすいといわれています。
したがって、単に「づらい」と暗記するより、「つらい」や「苦しい」という感情と結びつけて覚えるのが効果的です。
たとえば「上司に言いづらい」「寒くて動きづらい」など、実際の体験や情景とリンクさせると忘れにくくなります。
自分の感情とセットで覚えると、表現力も一気に豊かになります。
| 場面 | 感情 | 適切な表現 |
|---|---|---|
| 気まずい会話 | 心が重い | 言いづらい |
| 人混みの電車 | 動きにくい | 動きづらい |
| 人前で話す | 緊張する | 話しづらい |
⑤ デバイス別の入力チェック習慣をつける
スマホやパソコンの自動変換機能に頼ると、「ずらい」と誤変換されたまま投稿してしまうことがあります。
ビジネス文書などでは、誤用がそのまま残ると信頼性を損なうおそれがあります。
そのため、「ずらい」と入力したときに変換候補を一度確認する習慣を持つのが大切です。
“入力前に1秒確認”をルール化すれば、誤用を防げます。
| デバイス | 変換傾向 | 注意点 |
|---|---|---|
| パソコン(IME・Google日本語入力) | 自動で「づらい」に変換されやすい | ほぼ安全 |
| スマートフォン(iPhone・Android) | 「ずらい」のまま残るケースあり | 送信前の確認が重要 |
⑥ “づらい”はフォーマル、“ずらい”はカジュアルと使い分ける
最後に覚えておきたいのは、「づらい」は正式・標準語、「ずらい」は口語・カジュアルという棲み分けです。
この意識を持っていれば、どちらを使うべき場面なのか瞬時に判断できるようになります。
たとえばSNSでは「ずらい」でも許されますが、仕事のメールでは必ず「づらい」を。
| シーン | 使うべき表記 | 例文 |
|---|---|---|
| 日常会話・SNS | ずらい(口語) | この映画ちょっと見づらいね |
| レポート・ビジネス | づらい(正式) | 文字が読みづらい資料です |
| 教育・報告書 | づらい(標準) | 現状を話しづらい状況です |
まとめ:感覚でなく「意味」で選ぶのがコツ
「行き ず らい」と「行き づ らい」で迷ったら、発音ではなく意味で判断するのが最も確実です。
“つらい”気持ちを表したいなら「づらい」、単に言い間違えた音なら「ずらい」になります。
“つらい=づらい”の法則を覚え、意味で使い分ける。 それが、正しい日本語を自然に使いこなす最短ルートです。
「づらい」「ずらい」を使う他の言葉一覧
「行きづらい」以外にも、「言いづらい」「生きづらい」「食べづらい」など、似た形の表現はたくさんあります。
この章では、それらの言葉を体系的に整理し、どんな場面で「づらい」を使うのかを明確にします。
また、混同されやすい「ずるい」「ずれる」との違いも合わせて確認し、誤用を防ぐコツを紹介します。
① 「づらい」は“心理的・感覚的に困難”を表す
「づらい」は、主に「行動や発言に心理的・感覚的な抵抗がある」ときに使われます。
つまり、単に「できない」ではなく、“気持ちの上で難しい”というニュアンスを含むのが特徴です。
この意味の違いを意識することで、「にくい」との使い分けも自然に理解できます。
“心がつらいからできない”ときは「づらい」、“物理的に難しい”ときは「にくい」。
| 動詞+づらい | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 言いづらい | 言うのが気まずい | 本音を言いづらい雰囲気だ |
| 聞きづらい | 聞き取りにくい | マイクが遠くて声が聞きづらい |
| 歩きづらい | 歩くのが困難 | ヒールで歩きづらい道ですね |
| 話しづらい | 気軽に話せない | 上司とは少し話しづらい |
| 覚えづらい | 記憶しにくい | この単語は覚えづらい |
② 「ずらい」と混同されやすい表現
「ずらい」と書かれがちなのは、音の似ている「す」「つ」行の動詞と結びつくときです。
たとえば「話す」「出す」「歩く」などがそれに当たります。
しかし、これらもすべて正しい表記は「づらい」です。
“動詞が何であっても、基本はすべて「づらい」。”というルールを押さえておきましょう。
| 誤表記されやすい言葉 | 正しい表記 | 意味 |
|---|---|---|
| 話しずらい | 話しづらい | 話しにくい・言葉が出にくい |
| 生きずらい | 生きづらい | 生きるのが困難 |
| 歩きずらい | 歩きづらい | 歩きにくい |
| 読みずらい | 読みづらい | 文字が見えにくい |
| 働きずらい | 働きづらい | 職場環境に適応しにくい |
③ 「にくい」「やすい」との違いを整理する
日本語には「〜にくい」「〜やすい」「〜づらい」という似た構造の表現があります。
それぞれ微妙に意味が異なり、使う場面も異なります。
この違いを明確に理解することで、正確かつ自然な日本語が使えるようになります。
“にくい”は物理的な困難、“づらい”は心理的な抵抗、“やすい”は容易さを表す。
| 語尾 | 主な意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 〜にくい | 客観的に難しい・物理的障害 | このボタンは押しにくい |
| 〜づらい | 心理的・感覚的にやりにくい | 彼には言いづらい |
| 〜やすい | 容易・感覚的にスムーズ | このペンは書きやすい |
④ 「ずるい」「ずれる」との混同を避ける
「ずらい」という表記が定着してしまうもう一つの理由が、「ず」で始まる他の言葉の存在です。
「ずるい」「ずれる」などが日常的に使われているため、「ず」も正しい気がしてしまうのです。
しかし、これらの「ず」は全く別の語源・意味を持つ単語です。
「ず」は“する(為る)”が変化した形、「づ」は“つらい”の派生形。 根本的に異なると覚えておきましょう。
| 単語 | 語源 | 意味 |
|---|---|---|
| ずるい | 「する」+形容詞化 | 狡猾である |
| ずれる | 「ずる(滑る)」+助動詞 | 位置が少し動く |
| づらい | 「つらい(辛い)」からの派生 | 心理的・感覚的に困難 |
⑤ “生きづらい社会”という表現の背景
「づらい」という言葉の中でも特に有名なのが「生きづらい社会」という表現です。
この言葉は、心理的な負担や社会構造の中で感じる“精神的困難”を象徴しています。
つまり、「づらい」は単なる文法要素ではなく、現代の人間関係や社会問題を表すキーワードでもあるのです。
“づらい”は、心の苦しさを表現できる日本語ならではの繊細な語尾です。
| 表現 | ニュアンス | 使用例 |
|---|---|---|
| 生きづらい | 社会・人間関係に苦しむ | 現代は生きづらい時代だ |
| 働きづらい | 職場環境に馴染めない | ルールが多くて働きづらい |
| 話しづらい | 心理的抵抗・距離感 | 目上の人には話しづらい |
⑥ 「づらい」を使う日本語の特徴
英語や中国語など他の言語では、「心理的にやりにくい」という感覚を1語で表すことは難しいと言われています。
そのため、「づらい」は日本語特有の“感情の共有を重視する”文化から生まれた表現とも言えます。
“自分の心の微妙な抵抗を言葉にできる”のが、「づらい」という語尾の魅力です。
| 言語 | 類似表現 | 特徴 |
|---|---|---|
| 日本語 | 〜づらい | 感情・感覚の繊細な表現が可能 |
| 英語 | hard to〜 / difficult to〜 | 行動の困難さを客観的に表す |
| 中国語 | 不容易〜 / 很难〜 | 物理的・結果的な難しさを強調 |
まとめ:どんな動詞にも“づらい”を使えば正解
まとめると、動詞に「づらい」をつけると、その行為が“感覚的・心理的にしにくい”という意味になります。
「ずらい」と書かれていても意味は通じますが、文法的に正しいのは常に「づらい」です。
つまり、迷ったらいつでも「づらい」を選べば間違いありません。
“行動+づらい”が正解。このシンプルな法則を覚えれば、もう迷うことはありません。
まとめ:迷ったら「づらい」を選ぼう
ここまで見てきたように、「行き ず らい」と「行き づ らい」は、発音こそ似ていますが、文法・語源・意味の面では明確に違いがあります。
そして、その違いを理解することは、単に「正しい日本語を使う」こと以上の意味を持ちます。
それは、“言葉がどのように変化し、社会に受け入れられていくのか”を知ることでもあるのです。
① 正しいのは「づらい」――これは文法上の事実
「づらい」は「つらい(辛い)」が音変化してできた形であり、「動詞の連用形+づらい」という文法構造を持ちます。
このため、「行きづらい」「言いづらい」「話しづらい」など、どんな動詞にも自然に接続できます。
一方の「ずらい」には文法的な根拠がなく、辞書や教育基準でも正式な表記とは認められていません。
したがって、文書・教育・ビジネスなどの正式な場面では、常に「づらい」を使うのが正解です。
| 分類 | 正しい表記 | 根拠 |
|---|---|---|
| 公的文書・教育 | づらい | 『現代仮名遣い』(文科省) |
| SNS・口語 | ずらい | 発音・俗用として拡散 |
| 文学・表現作品 | どちらも文脈次第 | 意図的な表記ゆれ |
② 「ずらい」は“誤用”ではなく“時代の揺らぎ”
言葉は常に変化しています。
昔は「きょうだい」も「けうだい」と発音され、「じしょ」は「ぢしょ」と書かれていた時代がありました。
「ず」と「づ」の区別が曖昧になった今、「ずらい」が増えるのも、ある意味で日本語の自然な進化の過程です。
つまり、「ずらい」は“間違い”というより、“言葉の変化が進行している途中”だと考えた方が正確です。
誤用ではなく、変化の兆し。それが「ずらい」という表記の本質です。
| 時代 | 仮名遣いの変化 | 例 |
|---|---|---|
| 江戸時代以前 | ぢ/づ と じ/ず を区別 | つづく・ぢしょ など |
| 昭和以降 | 現代仮名遣いで統一方向へ | 続く・辞書 など |
| 現代 | 音声上の区別が消失 | 行きずらい(俗用化) |
③ 「づらい」は人の気持ちを表す日本語
「づらい」という語尾の魅力は、単に「やりにくい」という意味だけでなく、人の“感情”や“気づかい”を含んでいる点にあります。
たとえば「言いにくい」より「言いづらい」の方が、やや柔らかく、遠慮や優しさを感じさせる表現になります。
このニュアンスの違いは、日本語が持つ“思いやりの文化”をよく表しています。
「づらい」は、相手や状況を気づかうための言葉でもあるのです。
| 表現 | 感情のニュアンス | 例文 |
|---|---|---|
| 言いにくい | 客観的な難しさ | ちょっと言いにくいですが… |
| 言いづらい | 相手を思いやる柔らかさ | それは少し言いづらいですね |
| 話しづらい | 心理的距離・遠慮 | 上司には話しづらい雰囲気です |
④ SNSの中で変わる「言葉の正しさ」
インターネット時代では、言葉の「正しさ」が固定されたものではなくなっています。
SNS上では「ずらい」という表記も頻繁に使われ、検索エンジンのサジェストにも登場するほどです。
つまり、言葉の“実際の使われ方”が、“辞書の定義”を追い越しているのです。
「正しい日本語」は常に更新され続ける——この意識が、現代の日本語力です。
| 媒体 | 傾向 | 特徴 |
|---|---|---|
| 新聞・公文書 | 「づらい」を厳格に使用 | 規範重視 |
| SNS・会話 | 「ずらい」も一般的に使用 | 発音・自然さ重視 |
| 小説・脚本 | 文脈で表記を使い分け | キャラクター表現として活用 |
⑤ 結論:「迷ったら“づらい”、でも“ずらい”も否定しない」
現時点での日本語として正しい表記は、文法的にも教育的にも「づらい」です。
しかし、言葉は生き物。日々変化し、世代や文化によっても使われ方が変わります。
大切なのは、「相手に伝わる表現を選ぶこと」。
場面に応じて「づらい」と「ずらい」を使い分ける柔軟さこそ、真の日本語力だといえます。
迷ったら「づらい」を選ぼう。ただし、「ずらい」を使う人を間違いとは決めつけない。
それが、現代を生きる私たちにふさわしい、やさしく正確な日本語の使い方です。

